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H君とは小学5・6年の時、クラスが一緒だった。友達ではない。嫌いでもない。ただの “クラスメイト” だ。ただ、数十年経った今も、H君の印象はあまりにも強烈で、ただのクラスメイトの域を超えている。
一言で例えると、中身も外見も「宇宙人」みたいな少年だった。小さな顔に乗っかっている「目・口・鼻」といった部品は全て大きかったのだ。手足は細く長かった、と記憶している。よくTVなどで目にする宇宙人そのまんまだった。
〝性格は?〟と聞かれても、適切な答えを私は持っていない。真面目でもなく、不真面目でもなく。優しくはなく、でも冷たくもなく。とにかく掴み所がない男子だった。ひとつ言えるのは、「ものの言い方」が非常に辛辣で容赦無かったこと。
ただ、一度だけ、彼が「毒舌」を振るわなかったことがある。それは忘れもしない、大嫌いな「笛のテスト」の時。上がり症の私は、緊張で指が震え、それをみんなに気づかれるのが嫌で、私の心の中は大火事と大洪水が一度に押し寄せた位のパニック状態。その、私の焦っている様子の一部始終を、H君はじっと見ていた。蛇が獲物をじっと見ている時の様にしつこく。コレはもう観念するしかない。私はH君の毒舌を覚悟した。が、意外なことにH君は何も言わなかった。そう何も。
その頃私が住んでいた地域の小学生は、O中学校に進学するのだが、O中学校には3つの小学校から生徒が集まってくる、いわゆるマンモス校だった。それが理由になるだろうか、私はH君を見失ってしまった。全くH君を見かけなくなったのだ。この人は一体どんな中学生、高校生になるのだろう? と結構妄想を逞しくしていたのに。宇宙船に乗って他の惑星に去ったかのように、忽然とH君は姿を消した。
私は心の中で、密かにH君のことを “宇宙人” と呼んでいた。悪口の積りではないが、親しみを込めていたわけでもないので、ここはやはり隠しておいたほうが良かろうと思ったからだ。
それから数十年。宇宙人が地球を脅かすこともなく、私はそれなりに平穏な日々を重ねていった。だから、担任の先生の還暦のお祝いも兼ねたクラス会の時、H君の名前を耳にした時も、すぐにはピンとこなかったのは仕方あるまい。もう2次会に突入していたので皆少し酔っていたし、皆少し多弁になっていた。“そういや、 Hがお前のこと『何考えてんだか全然わからんかった。宇宙人みたいな奴だ』と話してたよ„ そう言ってクラスの元男の子が、私に話しかけた時、私は、「宇宙人」という言葉に異常に反応した。(宇宙人に宇宙人とは言われたくない!)。出来るものなら、本家本元の宇宙人にそう言ってやりたかった。
(私もH君にとっては宇宙人だったんだー)。これが、この話のオチである。H君とは小学校が一緒で出会ったのだが、同じ地域の人間という一体感の全く持てない人だった。どこか遠くの都道府県、いやもっと言うなら別の惑星からやって来た宇宙人の様な人だった。
現実の世界では、地に足をつけて生きていればいるほど、宇宙人(ちょっと関わっただけでアタマの中が「?マーク」だらけになりそうな人)と出会うチャンスは皆無だろう。ところが、RPGオンラインゲーム『MILU』の「ギフトバルーンシステム」を利用すると、ゲーム内にいるメンバーとランダムに交流できるのだ。アイテムを使うと、ゲーム内にいるメンバーの誰かにギフトバルーンが届くようになっていて、届いたメンバーと数回、メッセージ交流を行える。宇宙人は言い過ぎかもしれないが、「異邦人」くらいには出会える可能性大だ。
ほんの少しだけ日常に飽きてしまったら、日常の登場人物に新しい顔を混ぜると劇的に日常は変わるはずだ。必要なのは、ちょっとの「好奇心」と、ちょっとの「勇気」だけ。さて今日は、バルーンに、そしてH君の様な、自分と全く違うタイプの人と出会えるだろうか?
Writer:ひねもす