移動の手段は専らバスである。路線バスに乗って私が真っ先にすること。それは、寝ること。あとはメールやLINEの返信。締め切りが間近な時は、趣味の俳句をヒネる。本を読む。等など、フルに乗車時間を使っている。周りを見渡しても、みんな抜かりない。イヤホンをつけて音楽を楽しむ学生さん。赤ちゃんを寝かしつける若いママ。孫からの電話に慌てて出るお年寄り。大げさに聞こえるかもしれないが、路線バスの中は社会の縮図だと思う。
ただ、バスの中で、どうしても見たくないと思う景色が1つだけある。それは、バスの中で “化粧” をする女性だ。見つけると、私は大抵「瞬間湯沸器」になる。別に自分とは何も関係ないのだから、そんなにムキにならなくていいのに。と、自分で自分にツッコミを入れてみるものの、とにかく見るのが嫌なのだ。理論的に絶対私のほうが正しいという確証を持てるなら、本人に直接言いたい。 “人前で化粧ができるその神経が分かりません!„と面と向かって言えたら、イライラも少しは収まるだろうに。
世間はどう思っているのだろう? 過去に、ポーラ文化研究所が07年8月、首都圏在住の女性1500人を対象に調べたところ、電車内で化粧経験がある人は19%、全くしたことがない人は81%。30代以下の経験者は軒並み20%を超え、20代後半では、経験者が43%に達したそうだ。
では、車内で “飲食” をするのはどうだろうか。この場合の飲食とは、ガムを噛んだり水を飲んだりする程度ではなく、弁当やサンドイッチなどを本格的に食べることを言う。恥ずかしながら、私はつい最近まで、車内で飲食をしていた。今はしていない。何故しなくなったかと言えば、飲食をしている限り、車内で化粧をする人にエラそうなことは言えないと思ったからだ。
私は、子供の頃の習慣で、列車や電車に乗る前には食べ物を買っていた。そして乗り物が動き始めると同時に食べ始める、あの「瞬間」が大好きだったのだ。だからといって、車内で食べていいことにはならない。それは分かっている。そこで皆さんにお聞きしたい。「車内化粧」と「車内飲食」、貴方はどちらがイケないと思うだろう。
心情的には車内飲食の肩を持ちたいのだが、落ち着いて考えてみると、大の大人が車内でガッツリ食べるという体は、かなり見苦しい。 但し、長距離の乗り物であるならば、「駅弁」「空弁」と言うように、車内飲食は「完全に市民権を得ている」と言えよう。
“マナー” とよく似た使われ方をする言葉に “モラル” がある。両者の使い分けを端的に表現するならば、マナーは社会全体の雰囲気を形にした決めごとであり、モラルはマナーを守る心の動きだと考えられる。
「マナー」と「モラル」。この2つはセットで機能してこそ、意味を成す。それは、現実の世界だけではなく、ゲームの世界に於いても同じことが言える。アバター同士で築きあげる関係は、ともすれば相手も自分と同じ生身の人間であることを忘れがちである。相手も自分と同じ様に、アバターの背後で息を殺して、貴方の一挙手、一投足に注目しているのだ。だからこそ、いつものリアルな世界の時より、ちょっと余計目に挨拶してみよう! いつもよりお節介になって、友達の困りごとに首を突っ込んでみよう! 少しの勇気で大きな変化が、貴方に、そして相手に起こるはずだ。但し、その際は、リアルな世界の時以上に、マナーとモラルに対する配慮をお忘れなく。
Writer:ひねもす