漫画やイラスト、詩や小説。そういった “創作活動” を始める為の、最低限の条件は “筆記用具” であると私は考えている。そこに “楽しむ心” が加われば、筆を執るには充分だ。だが当然の如く、創作には苦労が付いてまわる。それ故に、継続する上ではより強い意志である「創作意欲」が必要となることは間違いない。
創作活動は思う様に行かないことが多い上に、生業にするのも簡単なことではない。そこで私は “趣味” という形で、「作品を創る習慣を広めたい」と思っている。その理由として挙げられるのは、私自身が小学五年生の頃、恩師の “提案” に救われた体験があるからだ。
当時の私は、クラスの連中とは上手く馴染めずにいた。(教室は居心地が悪いし、学校なんて楽しくない)と贅沢な不満を抱えていた私にとって、校内で唯一の居場所は図書室だった。小説を読むことだけは心の底から楽しめていたので、すっかり図書室の住民となっていたのだ。
その私に転機が訪れたのは、夏休みに入る直前のこと。図書室司書のK先生が、私に次の様な提案をしたのだ。 “小説が好きなら、君が小説を書いてみたら?„ さり気無く発した言葉に、私は全身に電流が走る様な衝撃を覚えた。(自分で小説を書く…… )なんて、今まで考えたことも無かったからだ。私は衝動的に “書いてみます!„ と答えていた。
提案を受けた翌日。執筆の為に筆記用具を用意した私は、蝉の鳴き声が微かに聞こえる図書室にて “執筆” を始めた。―― ところが、書き始めようとして早々に問題が起きる。(小説とはどの様にして書くのだろう…… )そう、読書が好きだとしても “書き方の知識の有無” は別問題なのだ。
私がノートと鉛筆を目の前にして暫く硬直していると、見かねたK先生が予想外のアドバイスをしてくれた。 “「名作を書こう」として苦しむより、「自由に書いて、伸び伸びと楽しもう」と考えてみたら?„ 私は思わずハッとなる。授業で書く「作文」の場合は、教師から良い評価を頂けるように書かなくてはならない。他者からの評価を気にしないといけない作業となる。が、趣味で書く小説には、そのルールが当てはまらないのだ。
小学生に対して「急いでプロの作家になれ」という話ではない。初めに覚えるべきことは、作品を創る時の “楽しいという感覚” だ。私はそれに気付けず、提出物の作文を書く感覚のままだった。「生みの苦しみ」を体験するのは、創作の楽しさを知ってからでも遅くはない。
私はそれから夏休みを利用して、短い小説を完成させた。詳細は思い出せないが、主人公が悪いドラゴンを倒す物語だったと思う。ありふれている、シンプルな物語だ。そこで、またもやK先生が “せっかく書いたのだから、他の人達にも読んで貰いましょう„ という提案をする。人付き合いが苦手な私は、作品の公開を実行に移すために勇気を振り絞った。
図書室の一番大きいテーブルの中央に、例のノートを置いた。その後は他の生徒が興味を持ってくれた時に読んで貰う、という仕組みで決定した。そこにK先生は一工夫して、私が用意したノートの隣に「感想ノート」とボールペンを添えてくれたのだ。私は恥ずかしさを堪え忍び、二週間を過ごした。その間は図書室に立ち寄らなかったのだが、理由は言うまでも無く、緊張していたからだ。
そして(そろそろ反応を見てみよう)と覚悟を決めて図書室を訪れた。幸いなことに、そこには殆ど生徒が居なかった。私はこれをチャンスと捉えて、感想ノートを素早く手に取った。――〝主人公は勇気があって格好良いですね〟他にも〝ドラゴンが町を攻撃する理由が分からないです〟―― といった様に、感想の内容は賛否両論だ。意味の解らない落書きもある。だがそれでも、私の小説の内容について、良いと思う点を書いてくれる人も確かに存在していた。その事実が何よりも嬉しかった。
その喜びと、もっと作品を書いてみたいという欲求により、 “小説を書き続ける” という私のライフワークが誕生した。その上、「小説を読んで貰う」という行動をきっかけに変化が起きる。私は作品を図書室で公開する以前よりも、クラスメイトと会話をする機会が増えていったのだ。
ひとつの作品を創るという、とても小さなきっかけで、その後の暮らしに充実感が加わることもある。だからこそ、自身の好みと合致する創作習慣を見つけて欲しい……、と私は人々に伝えたいのだ。
コミュニティ系RPGオンラインゲームの『MILU』では、コミュニケーション活動の一環として日記を書くメンバー様が大勢居る。その記述は詩的な内容から、人を笑わせて幸せにする、バラエティに富んだ内容まで揃っており、私はこれも創作活動の一環であると認識している。「自分を表現したい」という願望を持っている方もぜひ一度、この環境下で好きな様に日記を書いてみて欲しい。意外な「出会い」や「友情」に巡り合えるかも知れない。これからも、創作活動が人間同士を繋ぐ架け橋であることを願う。
投稿者:薪ストーブ設計マン