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料理好きな母と妹。この2人にくっついている限り、食いっぱぐれはないだろう。などと考える私は、ご想像の通り、全く “料理” をしない。しない分だけ、料理をする人に対する尊敬の念は沢山持っている。
だって、料理（特に家庭料理）は、本当に大変だ。料理に関するスキルはもちろんのこと、出来上がりの時間を意識して仕上げないといけない。お金のことも考えないといけない。いくら美味しくても、経費が掛かり過ぎるのは問題である。家族の中に美容や健康を気にする方がいる場合は、摂取カロリーや塩分量も頭に入れておかねばなるまい。調理時間、経費、カロリー。今ざっと考えただけで、料理には数字が付きものということが分かる。実際、アメリカ最大の女子大：スミス・カレッジの教授で、数理論理学者のジム・ヘンリーは、自著『おいしい数学―証明の味はパイの味』において、〝数学と料理は驚くほど似通っている〟と述べている。
一般的には女性が料理をするから、「女性の方が長生き」なのだ、という研究結果もある。台湾とオーストラリアの合同研究グループは、台湾に在住している65歳以上の高齢の男女1,888人を対象に、家庭での料理の頻度と寿命との関連を調査した。その結果、もっとも長生きするのは、家で料理をする人であることが判明。料理とは、思っている以上に知的な作業なのだ
母や妹を見ていてつくづく思う。家庭料理で最も神経を使うのは、家族の顔色を見ながら献立を決めることではなかろうか、と。（お父さんはお昼に何を食べたのかな？ 息子の今日の給食は何だったのかしら？ 献立を確認しなきゃ。ええと、昨日の夕飯は何だったっけ？ ）瞬時にありとあらゆるデータを考慮し、いつも食卓を設えなければならない。
核家族化が進み、料理番組のレシピも4人分から2人分が主流になった今。コンビニ弁当や宅食の質も以前よりはるかに改良された今。それでもやはり、自分ではない他者のご飯のおかずを考えるのは、かなりのエネルギーを要する。
家族の営みの中でも、最もコミュニケーション能力が問われる、食事をともにするという行為。献立を考え、材料を買い足し、いつもの時間に食べられるように心を配る。これだけ多くの行程を経ての食卓である。用意をしなかった者は、何かしら料理を褒めよう。自慢ではないが、私は殆ど毎回褒める。それは、着席すると目の前に料理が並んでいる幸福な人間に課せられた幸せな義務である。
私が家庭料理において最も大事だと思うこと、それは「毎日を作り上げること」である。これがレストランとは大きく違うところだろうが、味は二の次である。とにかく、毎日作って、なるべく食べてもらって、家族の生活のリズムを作り上げること。家庭料理は単にお腹を満たすだけでなく、家族１人ひとりの心身のリズムを作り上げるという重要な役目も担っている。
毎日同じことを続ける、というのは、ともすれば当たり前で有り難みにかけるものかもしれない。例えば、朝ご飯前に家族のお箸を並べておく。例えば、毎日遅刻しないように出勤する。こういった日常の当たり前の積み重ねが、穏やかな幸せに繋がっていくのではなかろうか？
ゲームに不具合が起きないように、当たり前にゲームが楽しめるように、日夜メンテナンス業務に励む裏方さん的存在のプロ集団がいる。ゲームは実は多くの人の力で成り立っているのだ。やっぱり人は「ひとり」では絶対に生きていないのだと思い知るだろう。今日、RPGオンラインゲーム『MILU』にインするとき、裏で『MILU』を支え続ける彼らのことをちょっと思い浮かべて欲しい。
Writer：ひねもす
