(ガンジー)
随分前に流行った動物占いからひとつ。好きな動物と好きな理由を述べよ。それで、なりたい自分が分かるらしい。大病をする前、私は馬が好きだった。理由は格好良いから。つまり私は格好良くなりたかったという訳だ。そして大病後、答えは “象” に変わった。理由は、大きくて包容力がありそうだから。動物占いが当たっているか否かは分からないが、ここ20年位、私の中で象ブームが続いている。
多くの方が気付いていると思うが、体の割には小さい、あの瞳が可愛い。象はとても感情豊かで共感能力が高く、仲間に対して深い愛情を見せることでも知られている。そんな温厚なイメージのある象だが、知能が高く執念深いため怒らせると、とても怖い一面も持っている。10年以上前、湖を望む日本有数の総合博物館、滋賀県立琵琶湖博物館で、象が鼻を使って描いた絵の展示を一度見たことがある。絵の完成度の高さに驚くと同時に、象の未知の能力を思い知らされた。
調べる毎に象の意外な一面を知って、ますます興味を持つようになった。中でも私が最も心惹かれた事実、それは象が、おばあさん象(メス)が群れを率いる母系社会であることだ。象は、争いごとを好まず、常に仲間同士仲良くコミュニケーションを図り合う。母系社会ならではの特徴かもしれない。なんだか、人間よりずっと利口なのじゃなかろうか。
しかも、「象は太古の昔からずっとヒトを見守っていた。象たちは、ヒトの祖先が樹から降り、森林から草原に出てきたときも、そっと場所を譲ってくれたほどだった」と著書『エレファントム₋象はなぜ遠い記憶を語るのか』の中で、イギリスの動物行動学者、ライアル・ワトソンが書いている通り、象は抜群の適応能力を持って、人間との共存の歴史を歩んできている。
(ジョージ・エリオット)
ここまで象に対する愛を熱く語ってきたが、実は生まれてこの方、1度も動物を飼ったことがない。それは、家族揃って動物が苦手だったり、暮らしていた住居の環境も大きな要因だが、1番の理由は私自身が、動物を怖いと思っていることに尽きると思う。 “動物が可愛くてしょうがない„と公言してはばからない人が、昔から羨ましかった。言葉は通じなくても、何かしら動物と繋がりを感じることが出来て、癒やされるのだろう。
そして、家族同然に愛情を注いできた動物が命を落とした時の落胆ぶりを目にするにつけ、(だから言わんこっちゃない)と思ってしまう。私なんか、自分の命でさえ持て余しているのに、動物の世話までは出来ない。冷たく聞こえるだろうが、それが本心だ。私にとって、現実世界での動物との理想の関わり方は、対等でちょっと解り合えてない友達のような感じである。だから「ペット」という呼び方も決してしない。
(ウォルト・ディズニー)
RPGオンラインコミュニティゲーム『MILU』を始めるにあたっては、レベル上げより何よりペットとの交流を優先している。現実世界では出来ないでいた「ペットを飼う」という心の贅沢を楽しんでいるのだ。ゲームの世界には、命の期限が無いから、動物をベタベタと安心して可愛がれるのがいい。
象を現実世界で飼うことはなかなか難しいだろう。なんと言っても象の、あの大きな体。そしてそれを支える食欲。1日の大半の時間を食事に費やし、大人の象は1日300kgもの食事と100ℓ以上もの水を飲むそうだ。人間の範疇に無理やり置くことは土台無理なのだ。
そういう、現実世界では叶わない夢をひょい、と叶えてくれるのが、ゲームの遊びゴコロの最たる点ではないだろうか。それは「嘘」ではなく、当事者にとっては「真実」になりうるのだと確信する。だから、素直にゲームの世界で遊んでみようと思う。餌も遊び道具も準備万端である。
Writer:ひねもす