ある事業所で出会いが出逢いを生んだ
ハーモニー……。出合うべきして出会った、と云うのはこの二人を指しているのだろう。親子程も年の離れた男女二人組ユニットの名は『パラフレーズ』。キーボードとボーカルを担当するのは日和(ひより)さん。自ら作詞作曲も手掛ける彼女は全盲である。一方、ギターコーラスパートのG・G(ジージー)は、「見えない病」に苛まれていた。
彼らにはハードルがあった。高すぎる程に、認めて貰えない重圧……全盲だから……障がいがあるから? 無理解な社会との闘い、本当は味方であろう地域相談員にも邪険にされ、歌は仕事にはならないと言われ続け、辛い思いを味わい悔し涙を流した日々もあった。それでも諦めない日和さんの気持ちが、今の彼らを作り上げて来たとも言えるだろう。
挑戦は未知の力
「意地でもシンガーソングライターになりたい……」。日和さんのその信念が、当時引きこもっていたG・Gの心を奮い立たせた。 “あのままだったら引きこもりでもおかしくなかった” と今は笑顔で語るG・G。彼女の存在こそが、彼を救ったとも言えるのではないだろうか。本当に人が人を思いやる心を改めて強く感じた。
「パラフレーズ」が結成されたのは2016年2月4日。彼らはその日から2週間で行動を起こした。二人が在籍する事業所はその当時、東日本大震災の被災者支援活動を行っていた。自分達に出来ることをと……作った応援ソング。そのオリジナル第1作目、『Hang in there』。何かをしていてそれが簡単なことではない、諦めたいけれど、どうしようと迷っている、くじけずに粘り強く持ちこたえる。……それはすなわち、自分自身へのエールも含まれていた。
そんな折「日本バリアフリー協会」が主催するコンテストの存在を知る。二人は早速、障がい者のメジャーデビューの登竜門でもある晴れの舞台への挑戦を決意。その頃はキーボードも弾けなかった日和さんと33年近くのブランクがある元バンドマンのG・Gは、その予選に出演。自信作の楽曲を披露した。しかし、結果は惨憺たるものだった。
だがキッカケが出来た。行動は自信に繋がり、チャリティーコンサートやライブ活動等を積み重ねて来たのである。
それから1年後……。彼らは奇跡を起こした! 有楽町の東京国際フォーラムで開かれた国内最大級の音楽コンテスト「第14回ゴールドコンサート」に、昨年の雪辱を期して再び挑んだ。優勝こそ逃してしまったものの、パラフレーズの代表曲『Destiny(ディスティニー)』がネットでの投票数1位とういう快挙! 不安や悩みを抱えている人達に、オリジナルの曲創りで “歌の処方箋” を届ける事をモットーにしている彼らには、逆にファンが増えたのである。グレイトとしか言い様がない。
夢を仕事から志事へ
『パラフレーズ』とは、音楽用語で楽曲を自由に編曲する事や、声楽曲から自由なピアノ曲を作る事、という意味。日常の中で感じた事を分かりやすく、歌に乗せて伝えて行きたい……と、名前の由来を明かした。日常から生まれたと云う歌詞やメロディーは温かいハーモニーを奏でる。自分達の何気ない幸せも、そこに見え隠れしているのではないだろうか?
G・Gは言う。[くさかんむり]+音符「樂」=薬。病気を治療する草。一説に、音符「樂」で、“音楽は人の心を癒す薬なのだ“ と言う。先日、彼らの地元である沖縄市で行われた野外でのお祭りコンサートでは、沖縄民謡界の大御所、古謝美佐子さんとのコラボが実現。古謝さんの名曲『童神』を熱唱した。初めての共演とは思えない程、堂々としたステージだった。
「パラフレーズ」のユニット名に込められた、皆に伝えたい彼らの願いや想いが詰まったオリジナル楽曲は既に40を超えた。“沖縄から世界へ”パラフレーズの歌声を届ける事を目標に掲げ、まだまだ新曲も増えると語る。二人は現在、沖縄の中部地区を中心にライブやチャリティー活動をしているが「更に拠点を拡げたい」と今後の展開を語っていた。着実に彼らは夢へ向かって歩んでいる。
最後にゴールドコンサートでネット投票1位を獲得した楽曲の歌詞を紹介したい。
『Destiny』 作詞・作曲 日和 / 編曲 G・G 初めて君の声に包まれた瞬間 心に咲いた恋の花 苦しくなっちゃうくらい本気の恋を するなんて思わなかった ラブメール増えていく度に 高鳴ってく鼓動 Ah~♪ 離れ離れでも君となら 愛を伝え合えた 平凡な日々が煌くの I will be with you forever 嬉しいことは直ぐに伝えたいの 君の笑顔は私のパワー 寂しくなって涙零れる日は 疲れていても電話くれた 記念日を迎える度に 降り積もる愛情 Ah~♪ ぎゅっとして欲しいその腕で 早く会いたいよ 切なさを愛しさに変えて I will be with you forever この出会いはきっと 偶然なんかじゃない 運命だと信じていたい 離れ離れでも君となら 全て分かち合えた 大切な人に出会えたの I will be with you forever
ドキドキする純真な歌詞。歌ならではの表現の素晴らしさ、沢山の愛しいあの人、親や子、また身近な大切な人に贈りたい言葉や想いとして受け止めている。
筆者と彼らとの出会いは以前の職場。夢を追って頑張っている二人の姿に心を打たれた。どうしても『パラフレーズ』の活動を、より多くの人々に伝えたいと思い筆を執った。
“逆境を跳ね返す音楽“ で、聴衆を魅了する『パラフレーズ』のこれからの更なる飛躍を期待してエールを送りたい。いつの日か訪れるブレイクスルーを信じて。
Author桂・新(かつら・あらた)
line://ti/p/@pte1326e (パラフレーズ公式LINE)
@liberta1018 (パラフレーズ公式Twitter)
http://www.dclog.jp/hiyori414/ (パラフレーズ日和ブログ)
画像提供/高坂麒麟