目には見えない障害。理解を深め共生していくためには?

目には見えない障害。理解を深め共生していくためには?

目には見えない障害。理解を深め共生していくためには?

Photo by / 画像出典:いらすとや

 
近年、「聴覚過敏」というワードがメディアで注目を集めつつある。耳が全く聞こえない、
もしくは音が聞き取りづらい聴覚障害とは逆に、余計な音に対してアンテナが強く働いてし
まい、くしゃみや機械音等一般的な人にとっては「害のない音」でも気分や身体に悪影響が
現れてしまうことである。しかしその多くの事象は未だ謎のベールに包まれており、理解の
ない人々から「偏見の目」で見られてしまうことも多い。

 

先日、とあるSNS上にてこんな投稿が話題になった。
 
聴覚過敏を抱える息子がいる女性からの投稿で、苦手な音から身を守るための「イヤーマフ」
という保護器具を息子に着用させていると、電車で居合わせた人に「音楽を聴かせていない
でちゃんと会話をしなさい」と注意されてしまったという内容。

 

「イヤーマフ」は見た目が音楽鑑賞用のヘッドホンとなかなか見分けがつかないため、「あ
の人ずっと音楽を聴いているな」と悪印象を抱いてしまう人も多いかと思う。しかし、この
「保護器具」を当事者から取り上げたらどうなるか。ある人はパニック状態となり大声でわ
めいてしまうかもしれない。ある人はひとたび「自分に悪影響を及ぼす音」を耳にしただけ
で恐怖を感じ行動できなくなるかもしれない。

 

実は、この記事を執筆している私自身も、高校生の頃から身の回りに溢れる音の一部に対し
て不愉快に感じ、その音を聞き続けることが苦痛になり始めた。当時のクラスメイト達も「
身の回りの音で態度が変わるわがままな私」に扱いづらさを感じたのか、段々と私から離れ
ていった。専門学校時代や社会人になってからも「あなたは全てを環境のせいにしている」
「大人になったらこれぐらい余裕で我慢できるでしょう」と、同期生や元同僚達、先輩達や
後輩達からも幾度となく言われてきた。

 

確かに大人になったのなら「周りの音を気にしない、耐えることができる」ということは「
当たり前のように使いこなせるスキル」であると認識する人は多いだろう。しかし、そんな
「当たり前のスキル」を全く使いこなせない人、使えたとしても一部しか扱えない人も少な
からず存在することも事実なのだ。

 

私自身の事例になるが、今でも耳を守るための保護器具になるものがないと、一部外出時等
に支障をきたすことがある。デジタルミュージックプレイヤーとヘッドホンで、自分の好き
な音楽やポッドキャスト番組(インターネット上でダウンロード配信されている音声コンテ
ンツ)を流して自分にとって有害な音から身を守っている。だが、これを家に忘れてしまっ
た日には不安な気持ちが大きくなり、ひどい時にはずっと小指で耳を塞いでいたり、泣きわ
めきそうになったぐらいだ。

 

「聴覚過敏」だけではない。この他にも文字が歪んで見えたり光や色の影響で体調不良に陥
る場合がある「視覚過敏」。特定の臭いが非常に苦手でマスクを手放せない人もいる「嗅覚
過敏」。口の中で余計な刺激を感じる、辛いものが非常に苦手といった理由のために特定の
食べ物を口にできない「味覚過敏」等がある。見た目は健康そのものの「健常者」に見える
人であっても、こういった「目に見えない障害」と戦いながら毎日を生きている人が、世界
中には相当数存在しているのだ。

 

外見からだけでは判らないハンディキャップ。上記に挙げた「目に見えない障害」や内部疾
患を抱え、偏見の目で見られながら生きる人々。どうすればお互い助け合い、理解しながら
共に生活していけるのだろうか。

 

私達ができることといえば、例えばこんなものだろうか。現在、各種SNSサービス・ブログと
いった情報発信ツールが充実しており、自ら手軽に情報を発信できる時代になった。理解し
てくれる人を増やすには、まず「事情を知ってもらうこと」「理由を知ってもらうこと」か
ら始まる。「耳を守るものを手放せない理由」「特定の食べ物を口にできない理由」「マス
クを外せない理由」を広く知ってもらうことで、理解して頂ける人が増えるだろうし、当事
者自身も今よりもっと安心して生活できるのだろうと思う。

 

感覚が敏感になるが故に音、目に映る物、臭い等に対して恐怖を抱き怯える人がいる。その
ため日常生活も満足に送ることができずにいる。身体障がい者や知的障がい者、難病患者で
あれば「症状が目に見えて判る」ことで手厚い援助を受けることができる。だが「症状が目
に見えない」場合は、例えば障がい者手帳を持っていたとしても信じてもらえなかったり、
「健康そのものの健常者である」と見られ、「単なるわがまま」「我慢が足りない」と、き
つい言葉を浴びながら自分の力で何とか乗り越えていかないとならないシーンがある。

 

そういった人々の「事情」「理由」を理解してもらうにはかなりの時間が掛かる。幸いなこ
とに東京都等、一部の地域では「ヘルプマーク」という症状説明用タグの配布が行われてお
り、「目に見えない障害」について簡単に説明できる施策が整いつつある。多くの人に事情
を知ってもらうことでお互いに気持ちよく手をたずさえて生活していけると思う。そんな日
が訪れることを信じて、一日一日を大切に生きていきたいものである。

 

「ヘルプマーク」について詳しくはこちらから(東京都福祉保健局)

 

投稿者:黒鉄紫吹(くろがね・しぶき)
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