多種多様な「方言」の『ありがとう』を駆逐する「共通語」の『ありがとう』

多種多様な「方言」の『ありがとう』を駆逐する「共通語」の『ありがとう』

m000121_k00003962_1024-768

Photo by / 絶景探検家ふく

 

▍地域に根付く感謝の言葉

『タンディガータンディ』……。断っておくが、外国語ではない。「東洋一」とも称される美しい白浜が7kmも続く「マイパマ(与那覇前浜ビーチ)」を擁する沖縄・宮古島の方言である。

近年、その綺麗な海が再認識され、リゾートアイランドとして人気急上昇の宮古島。世界最大旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」による「日本のビーチランキング・ベスト10」には、ベストビーチに輝いた「マイパマ」と共に、新城海岸と砂山ビーチもランクインした。
トライアスロンの聖地でもある宮古島。「マイパマ」は、レースのスタート地点としても有名だ。

我が生まれ島だが、残念ながら物心が付く前に宮古島を離れたので、幼少の記憶が殆んど残ってない。その後、両親が交わす故郷の方言を聞いて育ったお蔭で、約6割を理解できる程度だ。

冒頭の「タンディガータンディ」は、共通語の「ありがとう」を意味する「ミャークフツ(宮古言葉)」である。他の地域とは全く異質の宮古語は、単語そのものから違うので他の沖縄県民には理解不能の言葉である。

 

 

▍個性溢れる魅力的な言葉

「沖縄」は云わずと知れた方言の宝庫。「ウチナーグチ(沖縄言葉)」と呼ばれているのは沖縄本島で使われている一般的な方言を指す。大別すると、那覇を含めた中南部の「沖縄語」と、北部一帯で使われる「国頭語」の二つに分かれる。それ以外では、前述の「宮古語」の他に、「八重山語」、「与那国語」と、五つの地域に分類されている。

然し、実態としての「ウチナーグチ」は、「那覇言葉」と「首里言葉」の混合語である。「宮古語」も、宮古本島と池間島や多良間島の方言では会話が通じなかったりする。地域毎に微妙なニュアンスの違いもあって更に細分化されるので、実際の言語数はキリが無いと言えるだろう。

それらの方言を一括りにして「しまくとぅば(島言葉)」と呼ぶ。一時期、途絶えそうになった「しまくとぅば」だが、2009年、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)から消滅危機の指摘を受けて、県が本腰を入れて取り組んだ諸施策の効果で、やや復活の兆しを見せてきた。

※各地域の『ありがとう』の方言は、以下の通り。
●沖縄語 …… 「ニフェーデービル」
●国頭語 …… 「トートゥガナシ」
●宮古語 …… 「タンディガータンディ」
●八重山語 … 「ミーファイユー」
●与那国語 … 「フガラッサーユー」

実に個性豊かである。魅力溢れる方言も県外の方々には、まるでチンプンカンプンだろう。これほどまで馴染みのない言葉を耳にすると、意味不明の呪文に聞こえてくるかもしれない。

多種多様な「方言」の『ありがとう』を駆逐する「共通語」の『ありがとう』_02

Photo by /イラスト沖縄

 

 

▍時代に歩調を合わせる言葉

共通語が沖縄に普及する以前の琉球王国時代。それぞれの地域の方言で、「感謝」の言葉が交わされていたはずだ。勿論、他所から遠路はるばる訪れた来客に対しても、相手が理解しようがしまいがお構いなしに、自らの言葉で謝意を述べていたのは想像に難くない。

一生涯、地域共同体で暮らしてきた住民には、交流が無い他所の地域の言葉など知る由も無く、他言語の選択肢は無い。気持ちを伝える手段は地元の方言のみである。然しながら、言葉以外の身振り手振りのジェスチャーを見れば、遠来の客人も「感謝の意」を察してくれたはずだ。

郵便も電話も無い時代に於いては、感謝の想いを伝えられる相手は自分の行動範囲だけである。遠方の相手には直接伝える方法は無いので、第三者を介した言伝(ことづて)に頼っていたのだろう。

手紙や葉書などの文字を記した紙媒体が唯一の時代から「電話」が発明されて、状況が一変する。新たな情報通信革命によって、音声だけの意思疎通が可能になった。リアルタイムで言葉を交わせるようになってグローバル化も加速。それ以降は、電話が主流の時代が長く続いた。

1990年代後半から急激に普及したインターネット。情報化の発達した現代社会に溢れる「ありがとう」のメッセージ。発信の手段は幾らでもある。今や、子供の世代までも保有する程、必要不可欠のツールになった「携帯電話」と共に「メール」が伝達手段の主役に躍り出る。

肉声で交わす言葉の時代を経て、再び文字で「感情」を伝える時代を迎えた。独特で味わい深い方言は封印されたのか、PCや携帯の画面には共通語の「ありがとう」が氾濫する。

遠く離れた者同士で交わす言葉の必須条件は共通言語が基本。全国各地域で、かろうじて通用している味わい深い方言だが、もはやメールの世界では既に絶滅してしまった感がある。

実際に「漢字」には置き換えられない方言の文字入力は困難を極める。「ひらがな」や「カタカナ」だらけの文字は、確かに読み辛さは否めずストレスが溜まる。ただ、悲しいかな「方言」が放つ「親近感」は、優れた伝達手段であるメールと相性が悪く「親和性」が無い様である。

 

 

▍忘却の彼方へ消えゆく言葉

斯くなる事情で、日本では共通語の「ありがとう」だけが生き残る時代が、やがてやってくる。
もしかすると今、この刹那こそが方言の「ありがとう」を発する最後の機会なのかもしれない。この嘆かわしい状況に、我々はどう対応していくべきなのか。

且つては「地域コミュニティー」の骨格を成していた「方言」。濃密な人間関係を築き上げ、幾多の文化を育んできた歴史は誇るべきものだ。多様化に向かう社会とは相反し、日本語の多様化は望むべくもない。継承すべき「大切な言葉」の行く末を案じざるを得ないのである。

貴方は、もうすぐ忘れ去られようとしている方言を、金輪際捨て去っても後悔しないだろうか。
せめてメールの文中には、各地域で受け継がれてきた、貴重な方言の『ありがとう』の一言を書き添えてみては如何だろう。きっと、画面の向こう側の相手と「心」が通い合うはずだ。

拙文を読了頂き、『ニフェーデービタン(ありがとうございました)』。

 

Author:ブラック・スワン

このエントリーをはてなブックマークに追加

オトナが遊べる!

出会えるオンラインゲーム!

50万人とおしゃべりしよう!

オトナが遊べる!出会えるオンラインゲーム!50万人とおしゃべりしよう!

MILU(ミル)では個人の情報を大切に保護しています。個人情報の取り扱いに同意されたうえで、メールアドレスを送信してください。

今すぐ無料プレイ!